執筆者:保坂 琉介(出島フットボール インターン)
公開:2026年10月3日

北中米W杯をベスト32で終えた日本代表ですが、近年の競技レベルの向上は目覚ましく、欧州トップリーグで主力として活躍する日本人選手の数は増加の一途を辿っています。さらに国内へ目を向けると、Jリーグは半年間の「百年構想リーグ」を経て、2026/27シーズンより秋春制へと移行。欧州のカレンダーと同期することで、選手移籍をはじめ、Jクラブが欧州市場を意識する機会はこれまで以上に増えてきました。

このような変化を背景に、本コラムではUEFA(欧州サッカー連盟)が毎年発行する2つの公式レポートを読み解きます。1つは欧州クラブの観客動員や選手起用、移籍トレンドなどを分析する”The European Club Talent and Competition Landscape”、もう1つは各クラブの財務状況や投資動向を明らかにする”The European Club Finance and Investment Landscape”です。

コラムは以下の流れで進みます。一緒に「欧州サッカーの現在地」への理解を深めていきましょう。

#1~#4 The European Club Talent and Competition Landscape 2024/25 (2025年9月発行)
#5~#8 The European Club Talent and Competition Landscape 2025/26 (2026年9月発行)
#9~#12 The European Club Finance and Investment Landscape 2024/25 (2026年3月発行)


目次

1. 観客動員
1-1. 観客動員の全体像
1-2. 下部リーグの観客動員
1-3. 女子サッカーの観客動員

1. 観客動員

第1回は観客動員について取り上げます。2024/25シーズンに欧州クラブ及び代表の試合をスタジアムで観戦した人数は、少なくとも2億4,000万人に達し、新記録となりました。1年間で日本の人口の倍近くの人数が、欧州のスタジアムを訪れたことになります。

特に、欧州各地の1部リーグで大幅な増加を記録。30ものリーグで前シーズンの動員を上回り、そのうち9つのリーグでは10%以上の成長を遂げました。さらに、17のリーグにおいて、少なくとも過去10年間で最多の観客動員数を記録しています。また、下部リーグへと広がる男子サッカーの根強い人気に加え、近年の女子サッカーへの関心の高まりが、これまで以上に多くの観客をスタジアムへと惹きつけています。

 

1-1. 観客動員の全体像

– 最高値を更新し続ける欧州クラブの観客動員

前述の通り、2024/25シーズンの欧州サッカー全体の動員数は、過去最高の2億4,000万人に達しました。この内訳は、欧州クラブチームにおける2億3,300万人と、各国代表チームによる760万人の動員を合算したものです。この集計には、アマチュア以下の下部リーグ、UEFAユースリーグを除く年代別の試合、親善試合、カップ戦の予備予選、および一部の女子プロサッカーの試合における観客数は含まれていません。つまり、幾分控えめな見積もりとなっています。

2024/25シーズン観客動員の内訳

欧州クラブチームの総動員数2億3,300万人のうち、約半数にあたる1億1,400万人は欧州各国の1部リーグによるものです。しかし、注目すべきはその土台の厚さで、約3分の1を占める8,100万人が2部以下の下部リーグでの動員となっています。

また、新フォーマットである「リーグフェーズ制」が導入されたUEFA主催の欧州カップ戦は、前年比17%増となる2,000万人を動員しました。さらに女子クラブに目を向けると、リーグ戦に加え、国内カップ戦やUEFA女子チャンピオンズリーグなどを合わせた総動員数は、欧州全体で450万人を突破しています。

一方、代表チームの観客動員数は760万人と、前シーズン比で14%減少しました。これは、2023/24シーズンの終わりにドイツで開催され、300万人を動員した4年に1度の「UEFAユーロ2024」の反動によるものです。むしろ、今シーズン開催された大会に目を向ければ、その勢いは加速しています。UEFAネーションズリーグは、前回大会の300万人を大きく塗り替える400万人以上を動員し、同大会の史上最多記録を更新しました。また、女子代表においても、スイスで開催された「UEFA女子ユーロ2025」が動員数65万人を突破するなど、その関心は引き続き大きな広がりを見せています。

– 9つの欧州1部リーグが二桁成長を記録

欧州各国の1部リーグに目を向けると、30のリーグで総動員数が増加し、そのうち17のリーグでは少なくとも過去10年間で最多の観客動員を記録しました。下記の地図は、各国1部リーグの前シーズンからの動員成長率を色分けしています。

欧州各国1部リーグの2023/24シーズン比動員成長率

各国の動員に関する特筆事項は、以下の通りです。

  • イングランド/ドイツ:1部リーグの試合において、平均スタジアム収容率95%以上を記録。
  • スペイン:前シーズン(2023/24)比で3%増加。
  • イタリア:前シーズンに樹立された史上最多記録(総動員数1,170万人)と同水準を維持。
  • フランス:広く報じられている放映権問題の不況とは対照的に、総観客動員は3.8%の成長を記録。
  • オランダ:過去10数年で初めて、総観客動員数が600万人の大台を突破。
  • クロアチア:総観客動員数が100万人を突破し、史上最多記録を更新(前シーズン比11.7%増)。
  • オーストリア/ボスニア・ヘルツェゴビナ/ウェールズ:少なくとも直近10年間で最多の総観客動員数を記録。
  • エストニア/アイルランド/イスラエル/ラトビア/ポーランド/ポルトガル/スイス:直近20シーズン以上で最多の総観客動員数を記録。

– 1部リーグにおける観客動員数は、欧州全体で3%の増加を記録

平均観客動員数の上位20リーグのうち、13リーグが2024/25シーズンに増加を記録しました。欧州全体の平均観客動員数は約9,300人で、前シーズンから3%増加しています。

各国1部リーグの平均観客動員とリーグ内のばらつき(単位:百万人)

各国1部リーグの「平均値」に着目すると、イングランド、ドイツが1試合平均4万人前後という傑出した数値で欧州を牽引しています。これに平均3万人規模のイタリア、スペイン、フランスが続き、さらに2万人でオランダ、1.73万人でスコットランドと続きます。なお、J1リーグの平均観客動員は2024シーズンに20,355人、2025シーズンに21,246人を記録しており、5大リーグに次ぐオランダと同程度の水準にあることが分かります。

一方、「中央値」に着目すると、各国の順位関係は変動。例えば、フランスの中央値は欧州第3位で、平均値で上位だったイタリアやスペインを上回ります。対照的に、ポルトガルは一部の人気クラブが平均値を大きく押し上げており、平均値では10位であるものの、中央値では19位まで順位が下がります。

– 観客動員数の伸びを支える、欧州サッカーの強固なピラミッド

各国の観客動員は1部リーグだけでなく、下部リーグや国内カップ戦、そしてUEFA主催の欧州カップ戦によって支えられています。観客動員数の上位15カ国の内訳をみると、国ごとの特色が確認できます。

観客動員数上位15カ国の内訳(単位:百万人)

特筆すべきはイングランドとドイツで、下部リーグの動員の合計は1部リーグの動員数を上回っており、ピラミッドの下層においても高い集客力を有していることが分かります。また、国内にビッグクラブを有するオランダ、トルコ、ポルトガルなどは、欧州カップ戦で100万人前後の動員を稼ぎ、国全体の総動員に対して大きな影響を及ぼしています。

 

1-2. 下部リーグの観客動員

– 欧州サッカーの強固な基盤となる、8,000万人以上の下部リーグ動員

下部リーグ観客動員上位15カ国の内訳(単位:百万人)

下部リーグの動員に関する特筆事項は、以下の通りです。

  • 欧州全域:2024/25シーズン、欧州全域の3部リーグ以下における観客動員数は前年度比で12%の成長を記録しました。
  • ドイツ:ドイツの2部リーグは、1試合平均3万人以上という史上最多記録を樹立。これは、1部を含む欧州全土のあらゆるリーグの中でも第3位に相当する数字です。
  • スペイン:スペインの2部リーグは、動員数が前年比26%増と急増し、総動員数は600万人の大台に乗りました。これにはデポルティーボ・ラ・コルーニャやマラガCFといった、熱狂的なファンベースを持つ歴史あるクラブが3部から昇格したことが大きく貢献しています。
  • ポーランド: 2部リーグの「ルフ・ホジューフ対ヴィスワ・クラクフ」の一戦で、5万人以上の観客動員を記録。ドイツ以外の欧州2部リーグにおいて、5万人を集めたのは全欧州で唯一この試合のみです。

– マンチェスター・ユナイテッドとレアル・マドリードがシーズン総観客動員数200万人の大台を突破

2024/25シーズンのホームゲームにおいて、「1試合5万人以上」の観客動員を1回でも記録したクラブは、欧州14カ国・計39クラブです。国別の内訳は以下の通りです。

  • ドイツ:10クラブ
  • イングランド:7クラブ
  • イタリア/スペイン:各5クラブ
  • フランス/スコットランド:各2クラブ
  • ギリシャ/オランダ/ポーランド/ポルトガル/ルーマニア/ロシア/トルコ/ウクライナ:各1クラブ

下記グラフでは、ホームゲームで「1試合5万人以上」の観客動員を多く記録したクラブと、そのスタジアム収容率の内訳が示されています。収容率の傾向には所属リーグによる特徴が見て取れ、例えばイングランドやドイツのクラブは極めて高い稼働率を誇る一方、イタリアやスペインのクラブは比較的低い数値にとどまることが分かります。

ホームゲームで「1試合5万人以上」の観客動員を多く記録したクラブとスタジアム収容率

また、国内カップ戦やUEFA主催大会を含めると、合計35のクラブがシーズン総動員数100万人を突破しました。5大リーグ(イングランド、スペイン、ドイツ、イタリア、フランス)以外のリーグにおいては、SLベンフィカ(ポルトガル)、AFCアヤックス(オランダ)、レンジャーズFC(スコットランド)、フェイエノールト(オランダ)、ガラタサライSK(トルコ)の5クラブがこの大台を突破しています。

– イングランド、ドイツの1部リーグで95%超の平均収容率を記録

欧州全体で、少なくとも168の1部クラブが国内リーグ戦において「スタジアム収容率70%以上」を記録しました。この基準を50%に下げた場合、そのラインを上回るクラブ数は254に達します。また、以下の6クラブは国内リーグ戦におけるホームゲームで、スタジアム収容率100%を達成しました。

  • ボルシア・ドルトムント(ドイツ)
  • 1.FCハイデンハイム(ドイツ)
  • FCバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)
  • FCザンクトパウリ(ドイツ)
  • アーセナルFC(イングランド)
  • NECナイメヘン(オランダ)

なお、ドイツ1部リーグにおいて収容率が93%を下回ったのは、TSG1899ホッフェンハイムとVfLヴォルフスブルクのわずか2クラブのみでした。

欧州各国クラブの平均スタジアム収容率と平均観客動員(単位:千人)

 

1-3. 女子サッカーの観客動員

– 記録ずくめのUEFA女子ユーロ2025

スイスで開催されたUEFA女子ユーロ2025は、全31試合のうち29試合のチケットが完売。総観客動員数は65万7,291人に達し、これまでの最高記録であった2022年イングランド大会を塗り替えて史上最多記録を更新しました。また、チケットの約35%は国外ファンによって購入されており、購入者の国籍は160カ国以上にのぼります。

さらに、今大会は準々決勝の4試合で合計112,535人を動員し、同ラウンドにおける過去最多記録を樹立。なかでもフランス対ドイツの一戦は、開催国以外の国同士による準々決勝として、史上最多の観客動員数を記録しました。

UEFA女子ユーロ2025(スイス)会場別の試合数、平均観客動員、総観客動員

– 高まる女子サッカーへの注目

2024/25シーズンにおける欧州全域の女子1部リーグの推定観客動員数は、330万人を超えました。これにUEFA女子チャンピオンズリーグ、下部リーグ、および国内カップ戦を含めると、総動員数は推定で450万人を上回ります。

女子サッカーにおける観客動員数上位10カ国とその内訳(単位:千人)

2024/25シーズンに観客動員記録を更新した国とクラブ、および注目すべきハイライトは以下の通りです。

  • イングランド:アーセナル・ウィメンFCが欧州最多となる総動員数を記録。リーグ戦のみで30万人以上を動員。
  • フランス:リーグ戦のパリ・サンジェルマン対OLリヨンで20,489人を動員。
  • ポルトガル:エスタディオ・ド・ドラゴンで開催された女子ユーロ予選のポルトガル対チェコにおいて、40,189人を動員。
  • スウェーデン:女子CLグループステージのハンマルビーIF対マンチェスター・シティが20,428人を動員。
  • アイルランド:UEFA女子ネーションズリーグにおいて、アイルランド対北アイルランドが35,944人を動員。

次回は、#2「移籍トレンド」をお届けします。