
執筆者:小原一真
所属:北海道教育大学岩見沢校スポーツ産業研究室4年 (2026年3月卒業)
オランダリーグ各クラブの成長要因分析:事例② トゥエンテ編
この記事は、『オランダリーグ各クラブの観客動員に関する成長要因分析』の続編として、観客動員の成長率が特に高い4クラブ「AZ」「トゥエンテ」「ズウォレ」「ゴーアヘッド・イーグルス」の詳細分析を全4回にわたり掲載するものです。(参照記事:【コラム】オランダリーグ各クラブの観客動員に関する成長要因分析)
目次
1.クラブ概要
2.成長要因の分析
2-1 昇格効果
2-2 スタジアムに関する効果
2-3 成績による影響
2-4 スター選手効果
3.総括
1.クラブ概要
FCトゥエンテ(Football Club Twente ’65)は、オランダのエンスヘデ(Enschede)を本拠地とするプロサッカークラブです。1965年に設立され、オランダ国内リーグで長年にわたり存在感を示してきました。 本拠地スタジアムは デ・グロルシュ・ヴェステ(De Grolsch Veste)で、現在は約30,000人を収容する規模です。現在もエールディヴィジで競争力のあるクラブとして活躍しており、2023–24シーズンには平均観客数が約29,685人を記録しました。
2.成長要因の分析
2-1昇格効果
トゥエンテは、18-19シーズンにのみエールステディヴィジ(2部)に所属しており、それ以外のシーズンでは長年エールディヴィジ(1部)に在籍しているクラブです。19-20シーズンに再び昇格を果たしましたが、観客者数は約1,000人増加した程度であり、昇格による大きな影響は見られないと考えられます。その理由として、トゥエンテはもともと平均観客者数が多く、熱心なサポーターを抱えるクラブであることが影響していると推測されます。
(図1)トゥエンテ平均観客者数
2-2スタジアムに関する効果
トゥエンテの本拠地であるグロールシュ・ヴェステは2008年に開場され、現在も使用されています。開場当初の収容人数は24,000人でしたが、2011年の改修によって現在は30,000人を収容できるようになりました。
2008年の新スタジアム建設以降、観客者数は急激に増加しています。以前のスタジアムは13,500人規模であったため、新スタジアムの建設が観客者数増加に大きく寄与したことが明確です。また、11-12シーズンから収容人数が30,000人に拡大されたことで、さらに観客者数が伸びています。
以上のことから、トゥエンテにおける新スタジアム建設およびその後の改修は、観客者数の増加に対して非常に大きな効果をもたらしたことが確認されました。
2-3成績
FCトゥエンテは、シーズンごとの成績と観客動員数の間に一定の相関がみられます。グラフによると、同クラブは概ね上位でシーズンを終える傾向があり、その期間には平均観客者数も高水準で推移しています。特に2011〜12シーズンから2013〜14シーズンにかけては観客数が3万人前後と高く、順位も比較的上位に位置していました。
一方、2015〜16シーズンから2019〜20シーズンにかけては成績が中位から下位に低下し、その影響を受けて観客者数も減少傾向を示しました。この期間には降格も経験しています。
しかし、2021〜22シーズン以降は成績が再び上向き、観客者数も回復しました。直近の数シーズンでは、過去の好調期と同水準にまで戻していることが確認できます。
(図2)トゥエンテ平均観客者数と順位
2-4スター選手効果
観客者数の伸びが顕著にみられた08-09シーズン、11-12シーズン、22-23シーズンについて、スター選手効果を検証しました。分析方法としては、各シーズンにおけるリーグ内トップ選手の市場価値と、トゥエンテで最も市場価値の高かった選手を比較しています。
(表1)トゥエンテスター選手比較
| シーズン | トゥエンテ選手名 | 市場価値 | リーグ内 トップ選手名 | リーグ内トップ選手 市場価値 |
| 08-09 | Eljero Elia (元オランダ代表) | 6.00m€ | Klaas-Jan Huntelaar (元オランダ代表) アヤックス | 20.00m€ |
| 11-12 | Bryan Ruiz (元コスタリカ代表) | 10.00m€ | Christian Eriksen (元デンマーク代表) アヤックス | 16.00m€ |
| 22-23 | Vaclav Cerny (チェコ代表) | 8.00m€ | Antony (ブラジル代表) アヤックス | 60.00m€ |
Eljero Elia選手はオランダ代表として30試合に出場し、ユヴェントスでの在籍経験を持つ点からも一定の実力を備えた選手であると考えられます。しかし、市場価値の側面から見ると、リーグ内トップクラスと比較して大きな差があり、スター選手と呼べるかは判断が難しい水準です。
Bryan Ruiz選手はコスタリカ代表として147試合に出場しており、同時期のEriksen選手(16.00m€)と比べても10.00m€と高い市場価値を示しています。この点から、スター選手に近い存在であったことが確認できます。
一方で、Vaclav Černý選手は一定の評価を受けているものの、Antony選手の市場価値には到底及ばず、スター性という観点では大きな差がみられます。
したがって、22-23シーズンにおけるスター選手効果は限定的であり、08-09シーズンおよび11-12シーズンには“準スター級”の選手が在籍していた可能性はあるものの、観客増加の主要因とは断定しにくいと考えられます。むしろ、スタジアムの改修や成績の影響の方が大きかったと推測されます。
さらに、エールディヴィジのビッグ3(アヤックス、PSV、フェイエノールト)と比較したクラブ全体の市場価値をみると、08-09シーズンおよび11-12シーズンでは大きな差はなく、トゥエンテが一定の競争力を持っていたことが示唆されます。しかし、22-23シーズンでは市場価値の差が顕著であり、スター選手の存在感も相対的に弱まっていることが明らかです。
(図3)トゥエンテとオランダビッグ3のクラブ市場価値比較
トゥエンテ分析結果まとめ
| 昇格 | スタジアム | 成績 | スター選手 |
| × | △ | ◯ | × |
3.総括
FCトゥエンテの観客動員数の推移を20年間のデータから分析した結果、同クラブの成長を支えてきた主要因は「スタジアム効果」と「成績の影響」であることが明確になりました。とりわけ、2008年の新スタジアム開場および2011年の収容人数拡張は観客動員数を大幅に押し上げ、後年の高水準を支える基盤となりました。また、成績面でも上位を維持したシーズンには観客数も高水準で推移しており、好調期の11〜12シーズン〜13〜14シーズンはその典型例です。
一方、昇格効果やスター選手の存在については、トゥエンテの場合、観客増加への影響は限定的でした。同クラブはもともと熱心なサポーターを多く抱えており、昇格による大幅な動員増は見られませんでした。また、市場価値を基準としたスター選手分析でも、リーグトップクラスとの大きな差から、スター選手が観客増加の主要因であったとは考えにくいことが確認されました。
以上から、トゥエンテの観客動員成長は「クラブの基盤力」(=スタジアムの質・キャパシティ)と「競技成績」によって長期的に形成されてきたと総括できます。特にスタジアムの存在が最も大きな影響を持ち、成績の上下に応じて動員が変動するという構造が読み取れます。今後もクラブとして競技力と施設の両側面を維持することが、安定した観客動員につながると考えられます。
<参考文献>
Stadions FC Twente
https://fctwente.nl/club/historie/stadions
FCトゥエンテ・エンスヘデ-クラブプロフィール transfer markt
https://www.transfermarkt.jp/fc-twente/startseite/verein/317
アヤックス・アムステルダム-クラブプロフィール transfer markt
https://www.transfermarkt.jp/ajax/startseite/verein/610
PSVアイントホーフェン-クラブプロフィール transfer markt
https://www.transfermarkt.jp/psv/startseite/verein/383
フェイエノールト・ロッテルダム-クラブプロフィール transfer markt
https://www.transfermarkt.jp/feij/startseite/verein/234




