日本女子代表の2011年W杯優勝、日本男子代表のカタールW杯グループステージにおけるスペイン戦、ドイツ戦での勝利、2026年北米W杯への世界最速での出場決定、に象徴されるように、現在までに日本フットボールは世界に比肩する水準まで成長を続けてきました。それは、JFAが掲げる「2050年までにW杯で日本男子サッカーが優勝する」という夢に、多くの日本人が共感し挑戦を積み重ね続けてきた歩みと歴史によるものです。

そして、ここから更に日本フットボールの歩みを進め、進化の時計の針を早めるためには、選手の競争力に加え、フットボールビジネス人材、テクニカルスタッフ人材においても世界と肩を並べられるグローバル人材の育成が必要です。“MVV Maastricht Football HUB”は、その夢の実現に向けたプロジェクトとして日本とオランダを”フットボール”で繋ぎ「未来のフットボール人材」を育成するために、立ち上げられました。

今回、“MVV Maastricht Football HUB”プロジェクトの立ち上げ経緯とその内容について、出島フットボールの責任者である利重孝夫氏(出島フットボール 代表取締役CEO)と、本プロジェクトの発起人であり運営責任者である飯塚晃央氏(出島フットボール オランダ執行役)に話を聞きました。

――—まずはお二人のバックグラウンドについて教えてください。

利重孝夫インタビュー

(利重)
小さい頃からフットボールを始めて、小中高とフットボールに取り組んでいました。読売クラブのユースチーム(現、東京ヴェルディユース)でプレーし、選手としてフットボールに真剣に向き合うなかで、フットボールが持つ「人と人を繋ぐ力」に魅せられるようになりました。フットボールは世界で通じる共通言語であり、国境を超えて、世代を超えて、性別を超えて、人々をつなぐ力があると思っています。今回、出島フットボールがMVVマーストリヒトの共同オーナーとなったのは(注1)、このフットボールの持つ力を使って日本サッカーへ貢献したいという想いからでした。

*注1:プレスリリース

飯塚晃央インタビュー

(飯塚)
私はJリーグ開幕と共にフットボールを始め、自分の人生の大半をフットボールと共に歩んできました。フットボールは私の人生において大切なものを全部教えてくれたものです。そのフットボールに恩返しをしたい想いで、フットボールビジネスの世界に飛び込みました。

日本フットボールは先人たちの努力のおかげでこの30年で目覚ましい進歩を遂げていますが、日本フットボールが次のステージへ行くために何ができるのか、個人としてどう貢献できるのか、考え行動しながら日本・ベルギー・オランダと10年に渡りフットボールビジネスに携わってきました。

現在、私は出島フットボールのオランダ執行役として、MVVマーストリヒトの成長をサポートしています。その一つの形として、MVV Maastricht Football HUBプロジェクトを立ち上げました。

――—MVV Maastricht Football HUBの狙いは何でしょうか

(利重)
オランダのマーストリヒトという街には大きな魅力があります。古くから人々の行き交う交易地として栄えており、歴史と伝統と文化を兼ね備えた「欧州の古都」という言葉がふさわしい美しい街です。ベルギー・ドイツに隣接したユニークな立地は、アクセスのしやすい地理的な優位性を持っています。

近年、多くの日本人選手が海を渡り、ここ欧州の地でプレーすることが当たり前の時代になりました。これからの日本フットボールの成長と未来を見据えた時、トップレベルの選手だけでなく、ユース年代の選手、選手以外の人たちもサッカーを通じて成長できる機会、世界と戦う機会がどんどん出てくるでしょうし、またそういった機会を意識して作り上げることが必要です。

フットボールの持つ「人と人を繋げる」力と、この古くから人々の繋がる拠点だったマーストリヒト、この2つの魅力を合わせて、日本のフットボールに関わるすべての人々にとっての様々な可能性や需要を顕在化させ、それに応える機会を提供していきたいと思います。

――—どのような人たちに機会を提供していきたいですか?

(利重)
選手の方々にはすべての世代でチャンスを提供していきたいですね。トップレベルの選手だけでなく、小学生から大学生に至るまで、これからもっとフットボールを上手くなりたいと思っている若い世代の方々に、個人・チームを問わず、来てもらいたいです。

それからフットボールビジネス、スポーツビジネスでキャリアを構築しようと思っている大学生のみなさん、社会人の皆さんにも来てもらいたい。

最後に指導者の皆さんですね。まだまだ、選手に比べるとそれほどこのヨーロッパの地で日本人の指導者が実力を示すことができていないと感じています。潜在的な力はすごくあると思いますし、彼らが力を発揮し、経験を積める場をこのMVVマーストリヒトで作り、ぜひその力を試して、また磨いて欲しいと思います。

――—日本フットボールに関わる方々すべての人にチャンスがありますね!次に、MVV Maastricht Football HUB自体はどのような事業を行っていくのか、教えてください。

(飯塚)
MVV Maastricht Football HUBは日本・オランダひいては欧州をフットボールで繋げるプロジェクトです。具体的には、遠征・キャンプ・教育を通じた人材育成の機会を提供するグローバル事業です。実際にオランダのプロクラブの共同オーナーであることによりフットボールのインフラが整っている強みを活かし、ユース向け国際大会の開催もしていきたいと考えています。

日本フットボールが欧州トップレベルの国々とも比肩できる水準までレベルが上がっている中、日本フットボール全体として「欧州で早い段階からプレー経験を積みたい」「欧州のフットボールビジネスを学びたい」など、海外・欧州への意識が今まで以上に高まってきていると感じています。我々はその気運の高まりをチャンスと捉えています。

一部の選手トップ層だけでなく、選手以外の人材も含めた日本フットボール全体が海外との競争力を高めていくことが大切です。それは、単なるフットボール技術の向上だけでなく、フットボールを人生に寄り添った文化といえるくらいに深い繋がりとしていくことが必要だと考えます。だからこそ、欧州の生のフットボール文化に触れ、違う国、違う人々、違う言語を体験する中で、フットボールを通じた人間的成長に繋がって欲しいと考えています。

そのための拠点がここマーストリヒトなのです。

利重孝夫、飯塚晃央

ーーーフットボールを通じた人と人の繋がり、人間的成長を実現する。まさに、日本フットボールの新たな拠点・HUBですね!

(利重)
オランダのプロクラブの共同オーナーである我々だからこそ、マーストリヒトを拠点とした質の高い遠征・キャンプ・国際大会のプログラムや、実際のクラブ経営を学ぶような機会も提供していけると考えています。

(飯塚)
マーストリヒトを日本フットボールの新たな拠点、”HUB”とし、その進化の歩みに貢献していきたいです!

利重孝夫、飯塚晃央2025年10月15日 掲載