中山尚英 MVV Maastricht Football HUB

宮崎県都城市を拠点にユース世代の育成に取り組むセレソン都城FCが、MVV Maastricht Football HUBと連携し、2026年3月30日~4月6日にオランダ・マーストリヒトでの欧州遠征プログラムを実施します。

2025年8月に開催されたU13・U14向けのサッカー大会『コパ・ブラウロホ・サッカーキャンプ』で実施された選手セレクションを経て、選抜メンバーがマーストリヒトを訪問。オランダ2部MVVマーストリヒトの施設を利用したトレーニング、現地チームとの親善試合、さらにはオランダの文化体験など、選手たちが国際的な環境に身を置く貴重な機会となります。

このプログラムを日本側で主導するのは、セレソン都城FCで運営・コーチを務める中山尚英氏。宮崎出身のクラブOBであり、ラトビアやギリシャなど海外でのプレー経験も持つ中山氏にとって、今回の遠征にはどのような思いや狙いが込められているのでしょうか。

これまでのキャリアやご経験を含め、お話を伺いました。

 

ーーまずは、中山さんのバックグラウンドについて教えてください。

(中山)

宮崎県出身で、6歳から地元クラブでサッカーを始めました。中学ではJFAアカデミー熊本宇城に2期生として入校し、週末は地元のセレソン都城FCに戻って試合や練習をしていました。その後、日章学園で高校3年間を過ごし、1年間の浪人を経て早稲田大学へ進学しました。

大学では、3年生の終わり頃からコロナ禍になってしまい、その中でもプロを目指して1年間頑張りましたが、最終的に海外挑戦を決めました。ロックダウンが迫っているという情報もある中、急いで日本を出国しチャレンジしに行きました。

 

ーーコロナ禍の難しい時期に、なぜ海外挑戦を決意されたのでしょうか?

(中山)

プロを目指す上で、関東の周りの選手のレベルの高さに難しさを感じていました。そんな中、4年生になる前に、ラトビアで活躍されている大学OBの方から海外挑戦のお話をいただいたんです。

正直なところ、当時は海外挑戦がどういうものなのか、本当の意味では分かっていませんでした。ただ、自分のサッカーでどこまでチャレンジできるのか、キャリアハイを見つけたいという気持ちが一番大きかったかなと思います。

中山尚英 MVV Maastricht Football HUB

ーー渡航先のラトビアではどのような経験をされましたか?

(中山)

入団したFS JELGAVA(FKイェルガヴァ)は元々1部のチームでしたが経営破綻で2部に降格してしまい、チーム運営も含め難しい環境下でのスタートになりました。競技面ではある程度自分のポテンシャルを発揮でき、プレーヤーとして認められながらプレーできたので、非常に充実していたなと思います。

一方で、国の仕組みや生活基盤の違いを含め、私生活のところで非常に苦しみました。まず、現地の人には日本人と思われないんです。見た目だけでアジア人として扱われ、店員さんの対応一つにしても、劣等感を感じるような言葉や態度をとられることもありました。日本から遠く離れた国でマイノリティとして生きることの難しさを経験させてもらったなという印象です。

 

ーー日本がただ「アジアの一部」として見られる、そんな経験ですね。その後、ギリシャでもプレーされていますが、そちらではいかがでしたか?

(中山)

ザキントス島という島を拠点にするギリシャ3部のAO Ethnikos Skoulikadou(AOエスニコス・スクリカドゥ)に所属しました。他国からの観光客も多い地域だったので、人種や交流に対してあまり隔たりのない、アットホームでオープンマインドの方が多く、日常的には暮らしやすかったです。

しかし、ラトビアとは対照的に、サッカー面ではかなり苦労しました。国の文化としてイタリアの”カテナチオ”をリスペクトしていることもあり、典型的な試合では、前半20分で先制したら残り70分を守り続けるようなこともあります。

助っ人外国人としては結果が求められるので、例えば前半の1点を自分が取っていないと、70分守った後に「お前何もしてねえじゃん」って言われるわけですよ。いやいや、でも守備に回ったのは自分たちでしょ!みたいな(笑)。だけど、そういうスタイルなんです。

 

ーーそれはめちゃくちゃいい経験ですね(笑)。

(中山)

そうですね。サッカーとして同じ競技、同じルールの中でも、これだけ表現の仕方が変わってくるんだと感じたのが、 ラトビアとはまた違った部分での驚きでした。

中山尚英

(ラトビアのFS JELGAVA(FKイェルガヴァ)でプレーする中山さん)

 

ーーギリシャから帰国後、地元の都城に戻られてからはどのような取り組みをされているのでしょうか?

(中山)

もう一度海外に挑戦したいと考えていましたが、怪我や生活面の状況もあり、まずは地元で活動を始めました。

2022年には地元の仲間とGenuine Football Academyというサッカースクールを立ち上げ、また2023年には中学時代の古巣であるセレソン都城FCの法人化に伴い、クラブの運営やコーチングに携わるようになりました。

結果として海外再挑戦は断念する形になりましたが、今は地元の社会人チームであるNEXUS都城FCでプレーしつつ、クラブ運営・コーチ・選手という三つの立場でサッカーと向き合っています。

中山尚英 MVV Maastricht Football HUB

(NEXUS都城FCでも選手を続けている)

 

ーーそんな中、MVV Maastricht Football HUBとの取り組みに一番最初に手を挙げていただきました。その理由を教えてください。

(中山)

大学の4年間と海外経験を経て地元に戻り、地域の選手や文化、プレー環境に多くの課題を感じていました。選手のキャリアを極めていく上で、地方が中央と対等に戦えるようになるためには、後天的な育成の仕組みや文化が不足していると思います。

一つ大きなルート開拓が必要だと考えていた中で、今回ご縁があってお話をいただき、自分としても強い思いで参加を決めました。

 

ーーその上で、セレソン都城FCとして、また中山さん個人として、今回の遠征にどのようなことを期待されていますか?

(中山)

我々のビジョンとして、大学までのキャリアをしっかりと築ける選手を育てたいと考えています。地方からでも中央と対等に戦える“大人”が育つ、そんな文化形成をこのクラブではしていきたい。

今回の遠征では、選手たちが自分のキャリアについて考え、視野や視座を拡張する機会にしてほしいです。海外では、多くの失敗や違和感、感覚のズレに直面します。そのときにどう立ち回るか、またどう立ち回るべきだったのか、遠征中や遠征後も考え続けられる選手になってほしいと思っています。

中山尚英 MVV Maastricht Football HUB

(温かい眼差しでセレソン都城FCの練習を見守っている)

 

ーー最後に、中山さんはオランダのサッカーをどのように捉えられていますか?

(中山)

育成面で非常に整備されていて、 日本や欧州の若手選手がオランダで育ち、そこからビッグクラブへ羽ばたいていく「育成所」のような印象を抱いています。今回の遠征では選手だけじゃなく、我々指導者たち自身も学んでくるものがあると思っています。それを、今後のセレソン都城FCの指導にも活かしていければ良いですよね。

 

ーーユース育成伝統の地で、日本との違いを体感する。今回の遠征は、セレソン都城FC、中山さん、そして子どもたちにとって、とても良い刺激になるはずです。是非、成功に向けて一緒に取り組んでいきましょう!

 

執筆者:保坂 琉介(出島フットボール インターン)
記事:2025年12月10日

【コパ・ブラウロホ・サッカーキャンプについて】
コパ・ブラウロホ・サッカーキャンプは宮崎県都城市で夏・冬に2回開催されているU13・U14年代向けのサッカー大会です。大会を主催・運営する合同会社Blau Rojoはセレソン都城FCを運営し、宮崎県都城市からユース年代の育成に取り組んでいます。

セレソン都城FC公式インスタグラム:https://www.instagram.com/selecao_miyakonojo_fc/?hl=ja